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部門長の挨拶

 桐朋学園音楽部門は、このおよそ50年の間に「子供のための音楽教室」に始まり、高校部門、四年制大学、そして大学院大学へと発展をとげ、その決して長くはない期間に世界的に認められ、重要視される音楽学校へと成長したことは私達が大きな誇りにしてよいことであり、それを可能にして下さった諸先生方を始め多くの方々に深い感謝の念を捧げたいと思います。そしてこれを機に、これからどのような方向に歩んでいったら良いのかを、私なりの言葉で述べさせて頂きたいと思います。
 音楽は人から人へのコミュニケーションを母体とする芸術文化であり、音楽をする、演奏をするということは、作品を通じて聴き手と共有出来る空間をつくり出すことです。そこでは創造性というものがとても大事な要素であり、そのための思索、実践が中心を占めます。それは本学においては教育現場でのふれあいを通じて、より豊かなものを一緒につくり出していくという形で現れるのですが、具体的に言えば学生個人の持っている素質なり、個性を育み伸ばしてあげ、それを最大限に発揮させるということです。そこでは出来るだけ多くのことを学ぶことによって、音楽的な創造の内容を深めていくということが含まれますし、よりすぐれたもの、より良いものになりたいという人間の本質的な願いとも密接に関わってくるのです。そのためには一人ひとりが柔軟性があり、立体的な考え方が出来るようにするべく教育の場で刺激を与え、考えさせ、自分自身で何かをやってみるように仕向けることが大切になってきます。
 「学ぶこと」は「教えられること」ですが、「与えられる」という受け身に終始させることでは決してなく、教えているうちに「何かを学びとろう」という自覚と努力を促すことが非常に大事であると考えます。それと共に、努力をする環境を自らの手でつくりあげる能力を磨くことと、芸術の道を究めるために、自分の良さを最大限に発揮し得る場を自分自身でつくり出していくことが学生諸君に要求されます。そして同時に、幅広い知識を修得し、バランスのとれた一人の人間に育っていくことが望まれます。そこには自分を律して行かなければならない面があるのは否定出来ませんし、競争原理も働くかと思います。しかし「他人よりも自分が優れていると思っている人は、本当に優れているとはいえない。今の自分が以前の自分よりも優れているとは思える人が、本当に優れている人だ」ということを忘れてはなりません。
 私達の指導方針の根幹をなすものは、個を大切にし尊重しながら、皆さんの価値観を育み、目的意識を持っていただくというものです。
 可能性は無限です。自分の力を十二分に試してみてください。

堤 剛

音楽部門長 堤 剛

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