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HOME > 新着情報 > 2019年度 > 入学される皆様へ
ホームページで発表しましたように、今年は、新型コロナウイルス感染の危険性を考慮して、入学式を行わないことに決定致しました。はじける輝きに満ちた皆様の顔を式典では見られませんが、このようなことが起こり、より一層、皆様を大事にお迎えしようという気持ちが強まっています。
いま、世界は大変な時を迎えています。世界のどこでもコンサートやオペラが中止され、音楽の都のウィーンもベルリンも静まりかえっています。こういうときにこそ、音楽が必要とされると思いますが、今は多くの人が集まることは避けねばなりません。内なる音楽への思いを蓄えて、この静かな時間を大切にしてください。
演奏芸術は本質的になればなるほど、静謐(せいひつ)なものを要求します。どれほど賑やかな曲でも、良い演奏は、その底に静けさを秘めています。
もうひとつ、静けさを要求するものがあります。それは世界について考えるという行為です。瞑想、メディタシオンは、もともとは修道院で修道僧が中庭に向かって聖書を読むことでした。それは、世界について考えることを意味します。演奏芸術と、世界について考えることは、音、言葉を発しながらも、静けさに向かってゆくことにおいて結びついています。
音楽は、たとえそれが孤独な発信であっても、他者に語りかけるものです。アンサンブルの場合、異なる音楽観であっても互いに否定はしません。否定しては成り立ちません。共に形づくるものです。ソロだけでなく、室内楽、オーケストラと、桐朋にはそういう場が多くあります。ここでは高校生も大学生も大学院生も、上下の差はありません。桐朋の高大一体教育(大学院も含みます)の伝統がその一緒の時間を育んできました。新入生の皆様も入学と同時にすぐにその伝統につながります。
今年は入学式はありませんが、私たちは、静かに、喜びをもって、皆様をお迎えします。切なる思いを皆様に注いでいます。
2020年3月20日
桐朋学園大学 学長